「カークはああ見えて緻密(ちみつ)な計画を好んでいた」

 カップを傾けながら語った言葉に彼女は笑みを浮かべた。

「父さんって見た目がああだから、凄く無骨に見えるみたいね」

 嬉しそうに語る彼女を見やり、ベリルはおもむろに何かを目の前のテーブルに乗せた。

「! これ……」

「渡すのを忘れていた」

 テーブルに置かれた薄汚れた携帯用のチェス盤を手に取る。

「父さんの……?」

「決行の前に私に預かってくれと」

 その言葉にか細く応える。

「そうだったんだ……父さんが勝てないって言ってたの、ベリルさんだったのね」

「! カークがそんな事を?」

「『いつか絶対に勝つ!』……って」

「そうか」

 目を細めてチェス盤を見つめる。