「……っはぁ~危なかったぁ」

「あはは」

 ホッと肩を落とした彼女に笑みをこぼし、持っていたグラスを手渡した。

「正室候補のことは皇帝には言ってなかったのね」

 笑った彼に仕返しのこどく言い放ってやる。

「うっ……さすがにそこまでの話にはならなかったから」

 痛いところを突くなぁ……と苦笑いを浮かべ頭をかいた。

「でも、あなたの言ったことよく解る」

「え?」

「前にレオナ皇女に言ったでしょ。彼を束縛しないで欲しいって」

「! ああ……」

「皇帝からベリルの名前が出て、ふとその時のあなたの言葉を思い出したの」

 そう発して見上げる彼女に目を合わせ中庭に視線を移した。

「だって……本当のことだから」

 愁いを帯びながらも柔らかな彼の瞳にソフィアも微笑んだ。