あなたを愛したいくつかの理由

 ピアノとヴァイオリンの生演奏に運ばれてくる綺麗な料理は彼女にとって全てが新鮮で緊張だった。

「う……」

 マナーなんかあんまり分かんない……目の前の料理に内心、悪戦苦闘していた。

 会食が決まって数日は自分で調べたマナーを必死に覚えていたが、どうにもならなくなってベリルに電話し彼から送られてきたデータを見ながらおさらい。

 そして今に至る。という訳だが、記憶にあったって実際にやってみるのとは違う。あまりの緊張に味も解らない。

「気にしないで」

 見かねたレオン皇子が彼女につぶやく。気にしないでって何を気にしないでいいのか解らない。頭はパニック状態だ。