あなたを愛したいくつかの理由

「!」

 去っていく2人を見つめている彼女の隣にベリルが無言で立つ。

「ごめんなさい。辛かったでしょ」

「いや」

 彼はさして関心も無いような表情を入り口に向けていた。

「言って楽になる事もある」

「!?」

 彼女はその言葉に驚き、すぐに理解した。

 ベリルさんはもしかして

『哀しみのはけ口』になるために来たんじゃ……あえて言葉の剣(つるぎ)を浴びに来たの? あたしたちのために?

「どうしてそこまで……」

 驚きと戸惑いの眼差しで見上げる彼女を一瞥し、彼はつぶやくように発する。

「負った責任から逃れる事は出来ない」

「……」

 父さんが、彼を信頼していた理由が解った気がした。