「じゃあ……仕事、気をつけて」

「うん、ありがと。あ! あなたも、気をつけて」

 青年はニコリと笑って城に戻っていった。その背中を見送って、自分の唇に軽く触れる。

「……」

 びっくりしたけど、どうしてか素直に受け止められた。

「でも……皇子よね」

 思い出して青ざめる。

「やっぱり無理、だめ」

 皇族の人がこんな平民……しかも義賊とはいえ一応は泥棒してる人間に! いや、一応ってなんか変だけど。てかそこじゃなくて!

「ああん! もうっ!」

 ぐるぐる回る思考に困って階段を駆け上がりベッドに体を投げた。シーツにくるまり、枕を抱きしめる。

「でも、あたしも……好き、かもしれない」

 メールが来る度、喜んでいた。メールが遅い日は、あたしの相手に飽きたんじゃないかと少し怖かった。

「あたし……」

 自分の感情に改めて直面した。