あなたを愛したいくつかの理由

「一応、お忍びだったから」

 苦笑いで発した彼にクスッと笑って木製の厚い扉をくぐった。

「うは」

 間近で見る城は荘厳で威圧的にさえ感じられ、まるで覆い被さってくるような恐怖も湧き上がる。

「怖いかい?」

「! そんなコト……」

「城っていうのは、そういうものなんだろうね」

 微笑んで、かつて戦いの時代があった事を物語る名残を説明しながら進み、城に入るドアに手をかけた。

 大理石の歩廊がソフィアを迎える。

「はぁ~……」

 天井につり下げられた綺麗なシャンデリアと、一定距離で飾られている絵画に溜息しか出なかった。

「あ、俺の部屋にお茶とお菓子を頼む」

「かしこまりました」

 彼が通りすがりの侍女に言うと、その女性は快く返事をした。

 ソフィアにも軽く会釈して遠ざかっていく。

 そうして招かれた部屋は太陽が差す広いスペース。

「遠慮しないで」

「……」

 そう言われても遠慮しますって……と恐る恐る部屋に入るとレオン皇子はバルコニーに案内した。