「解ったわ」

 ニッコリと微笑んだ彼に溜息を吐き出した。

 お城の中も見てみたいし、このまま彼とお喋りしたくなったし……と促されて城へ向かう。

「あ……」

 その道すがら、ふと思った。

 そうか、あたし今頃やっと気がついた。

 あたしがベリルを好きになって、諦めようと思ったのは──

「あのね」

「何?」

 声をかけられて立ち止まり、見下ろした彼女の表情は少し真剣だった。

「あたしが彼を諦めたのは、恋愛感情よりも強い心が芽生えたからなの」

「!」

 言ったあと、再び歩き出す。

「確かに彼は誰も愛さないけど、それって愛情が無いんじゃなくて……大きすぎるんだわ」

 とても、とても大きな愛情。

「あたしは、彼を父のように感じていたコトに気が付いたの」

 あの手の温もりも、あんなに安心出来たのも、父の腕の中にいたからなんだ。