必死で走ったが見失ってしまった。

 四方に広がる石畳に、平日の昼間は行き交う人々は少なく閑散とした風景だが入り組んだ街はそう易々と目標を探し出せるほどではない。

「はあ……はあ……っもう!」

 止まっていても始まらない、とにかく歩いて探さなければ……荒い息を整えながらゆっくり歩く。

「!」

 そんな彼女の目に、先ほど男たちの行方を尋ねた青年の姿が──しかも、その男たちに囲まれている。

「!? まさかっ」

 全速力で駆け出した。

 取り巻く雰囲気は重々しく、どう見ても道を尋ねているようには感じられない。

「よせ!」

 青年を囲う輪を狭めていく6人ほどの男たちに、とっさに声をあげて制止した。

「!」

 その声と割って入った影に青年は驚いて、前に立つ背中を見下ろす。間に合ったと小さく溜息を吐き、苦笑いで軽く振り返った。

「あなたがレオン皇子だったのね」

「君は……」

 ブラウンの髪と青い目、髪を染めてカラーコンタクトをしているのだろう。

 確かによく見ればレオン皇子だ。