あなたを愛したいくつかの理由

 それから納骨の手続きを終えて当日まで父さんの荷物の整理を始めた。

「……少ないね」

 必要最低限の物しかなくて目を細めて苦笑い。

 父さんの趣味はチェス。あんな大きな体でチェス盤を前によく唸ってたっけ。

 どうしても勝てない人がいて、

「いつか鼻をあかしてやるんだ」って言ってたっけな……その人には勝てたんだろうか。

 ううん、きっとまだ勝ってないのよね。だって、勝っていたら大喜びしたハズだもの。

 少しだけ残して、売れる物は売ろうと思っていたけどチェス盤は残しておこう。

「!」

 ふとナイトテーブルの上に乗せられているフォトスタンドが視界に入る。

「……」

 見ないようにしていたのに……と少し眉をひそめた。

 それは、父のカークとソフィアが笑顔で映っている写真、その隣には母親のセレンと3人で映っている写真が並んでいる。

「……」

 その2つを無言でパタリと伏せた。