いくつか空港を経由して、懐かしい故郷の地に目を細める。

「……変わってないな」

 手続きを済ませ、一緒に運んできたパステルピンクのニュービートルの扉を開いた。

 イタリアのような街並みと石畳が優しく彼女を迎える。

 両親と行った小さなレストランもまだあった。

 たった2年しか離れてなかったのに、とても懐かしくて彼女の心に揺らぎを与えた。

「すぐに生活出来るようになってるってベリルが言ってたけど」

 車を駐車場に駐めて家に向かう。そして半信半疑で鍵を鍵穴に差し込みゆっくりと回した。

「……」

 リビングには液晶テレビ、キッチンには冷蔵庫と電子レンジにIHクッキングヒーターとガスオーブン。

「あたし……カギ渡した覚え、無いんだけど」

 薄い笑みを浮かべ、どうやったのか想像をめぐらせた。

「きっとルーシーたちが手伝ったのね」

 そう自分を納得させ、持っている荷物を部屋に運ぶ。

 一通りの片付けが終り、懐かしの我が家を見回したあとキッチンに向かって紅茶を煎れた。