あなたを愛したいくつかの理由

「今の皇帝はムカネル皇帝なんだけど、50歳っていう高齢なのよね」

 そして話題をフォシエントに切り替える。

「うむ。第一皇位継承者はレオン皇子、20歳だ」

 レオン皇子の写真を手渡す。それを受け取って少し眉間にしわを寄せた。

「それは数年前のものだが、今はもう少し顔つきが変わっていると思われる」

「レオン皇子……」

 皇族の住む城のある首都に家があるソフィアだが、レオン皇子を間近で見た事はない。

 テレビで皇族の番組が定期的に流れる程度で、彼女にはさしたる関心はなかった。

 初めてマジマジとレオン皇子の顔を見つめる。

 肩までの黒髪と切れ長の黒い瞳──整った顔立ちだが、その挑戦的で不敵な笑みが妙に苛つかせる。

「ベリルは彼に会ったコトがあるのよね」

「うむ」

「どんな人物なの?」

 問いかけた彼女の目に一瞬、瞳を曇らせ彼が映った。

「? なんかまずいコトでも?」

「いや……そういう訳ではないが」

 濁らせるような物言いに小さく首をかしげる。