「……」

 黒いピックアップトラックの助手席で、ガラスの下げられた窓に肘を乗せて風に当たる。

「怒るなよ」
「怒るわよ」

「仕方ないでしょ。ベリルは仕事中」

「解ってるけど……っ!」

 彼女の不満げな表情に小さく溜息を吐き出す。

「仕事の内容が知りたかったのかい?」

「!」

 的を射抜かれて目を伏せた。

「教えられる訳ないでしょ。それくらい学んでるハズだよね」

「……」

 言われて、ますます下を向いた。そんな彼女に呆れたように目を据わらせて口を開く。

「大体の想像は付くでしょ。中東といえば……解るよね」

「! 内戦?」
「他には麻薬」

 車を走らせて続ける。

「チップの中身は、多分だけど麻薬組織かもしくは麻薬製造のデータ。作戦遂行中ってことは、どこかの組織を叩いている最中なんじゃないかな」

 チップは多分、何かの決定打になり得るものが入ってるんだよ……青年は冷静に、そして的確に判断して語った。