「全然……素晴らしくなんか無いじゃない」

 憎しみを帯びた瞳でつぶやいた彼女に、彼はただ静かにそこに立っているだけだった。

 言い訳も目を逸らす事もなく、じっと彼女の怒りと憎しみを受け止め続ける。

「……」

 沈黙している彼女にバッグから遺骨の入ったシルクの白い布にくるまれた30㎝ほどの木箱を差し出す。

「!」

 潤んだ瞳でそれを受け取り腕の中のそれをじっと見下ろした。

 現実を否応なく突きつけられ、どうしていいのか少しだけ戸惑う。

「父さん……」

 あんなに大きかった父さんがこんなに小さくなっちゃった……檜(ひのき)の香りがソフィアの気持ちを落ち着かせる。

 死んでも父さんはあたしを落ち着かせてくれるのね……小さく笑った。