王子様の甘い誘惑【完】


屋上から出て、教室に戻る途中。


「あっ……」


あたしは前から歩いてきたユキ先輩に気が付いた。


視線を足元に落としながら、ユキ先輩は徐々にこちらに向かってくる。



ユキ先輩とは、文化祭でのあのキス以来、一度も顔を合わせていない。


学校では会わないように先輩を避けていたから。


会って、どんな顔をすればいいのか、あたしには全然分からなくて。


一歩一歩、ユキ先輩との距離が縮まっていく度に鼓動が速くなる。