王子様の甘い誘惑【完】


23時過ぎ。玄関の扉が開いた。


「……理生?こんなとこで何してんだよ」


リビングの電気を点けた蓮が驚いて声を上げる。


「おい、どうした?何かあったのか……?」


ソファに座るあたしの隣に腰掛けると、蓮は心配そうに顔を覗き込んだ。


「……どこ行ってたの?」


「は?」


「ねぇ、ちゃんと答えて。どこに行ってたの?」


「なんで急にそんなこと聞くんだよ」


蓮は不思議そうに首を傾げる。



「じゃあ、誰と出掛けてたの?」


愛子さんとだって知ってて聞くなんて最低だよね。


ごめんね、蓮。こんなことで蓮を試すなんて。


だけど、気持ちを抑えきれない。


「ユキと会ってただけ。何でそんなこと聞くわけ?」


「ユキ先輩と……?」


嘘つくっていうことは、やましい気持ちがあるってことだよね。


ドクンっと心臓が不快な音を立てて鳴り始める。