王子様の甘い誘惑【完】


「ごめんなさい。ちょっと用が出来ちゃって」


戻ってきた愛子さんはそう言ってニコリと嬉しそうに笑った。


『用って誰とですか?』


そう聞かなくても分かる。蓮とだって。


愛子さんの笑顔がそれを物語っているから。


蓮は……いつだって、愛子さんを選ぶんだね。


あたしは蓮の何なんだろう。


ねぇ、蓮。


あたし……苦しくて堪らないよ。


店を出ると、愛子さんは「じゃあね」と幸せそうに手を振ってあたしに背中を向けた。