王子様の甘い誘惑【完】


「お願い、理生さん……。私に蓮を返して……?」


蓮を……返す?愛子さんに……蓮を……?


「あたしは……――」


蓮が好きなんだ。意地悪で強引で意地っ張りで。


だけど、優しくて温かくて……。


だから、あたしは蓮を手放すことは出来ない。


蓮があたしを選んでくれる限り、あたしは蓮から離れない。


それを、ちゃんと伝えなきゃ。


愛子さんに……あたしの気持ちを……――。




「あたしは蓮が……――」


絞り出すような声でそう言った時。


≪♪~~♪~≫


テーブルの上に置いてあった愛子さんの携帯が鳴りだした。



「あっ……蓮だ……。ちょっと、ごめんなさい」


そんな言葉を残して、愛子さんは携帯を手に席を立った。