「うちの父はあたしと付き合ってた蓮にキツく当たっていたの。だけど蓮は何を言われてもずっと耐えてくれてた。あたしの為に……」
蓮が愛子さんに別れを告げた理由……
それは、愛子さんを想ってのことだったの……?
「中学を卒業したら、海外に留学したほうがいいって言い出したのも父なの。もちろん蓮と離れたくなかったあたしは反抗した……。だから、蓮はあたしに別れを……――」
そう言いかけて、愛子さんは堪らずに目に浮かぶ涙をハンカチで拭った。
「お父さんがあたしの知らないところで蓮に言っていたらしいの。あたしを想うならこそ、諦めろって」
愛子さんを想うなら……諦めろ?
好きなら別れろっていう愛子さんのお父さんの言葉を……蓮は守ったんだね。
大好きな……愛子さんの為に。
あたしは愛子さんの話を聞きながら、氷が溶けて味の薄くなったレモンティーをぼんやりと見つめていた。