王子様の甘い誘惑【完】


「どういう状況かは分からないけど……蓮っていう彼氏がいるのに、他の男の子とキスするなんて最低だと思うよ?」



愛子さんの視線はユキ先輩からあたしに向けられた。


最低。


その言葉が胸に突き刺さる。



そうだよね……。確かに、あたしは最低なことをしたんだ。


愛子さんの言う通りだよ……。



「蓮だけを愛せないなら、あたしに蓮を返して!!」


「愛子、お前いい加減にしろよ」


蓮が愛子さんを制止する。


だけど、愛子さんの目は真剣そのもので。


あぁ、やっぱりそうだ。愛子さんが蓮を好きなのかもっていう疑惑が確信に変わる。



「あたし、まだ……蓮のことが好きなの!!」


その叫びは、あたしに向けられたものなのか、蓮に向けられたものなのか。


どちらかよく分からなくて。


だけど、愛子さんが未だに蓮に想いを寄せているっていうことだけは、よく分かった。