王子様の甘い誘惑【完】


「……疲れたぁ」


「すっげぇ、疲れた」


同じ台詞を同時に言って思わず互いの顔を見合わせる。


「あいつ、この辺りで有名なババァなんだよ。何かにつけて文句言ってくる」


「もしかして、蓮も文句言われたことあるの?」


「二回ある。一回目は、人を睨むな。二回目は耳に開けたそのピアスの数が不快だ」


「……プッ!!何それ!!」


思わず吹き出すと、蓮は真剣な表情になった。


「ああいう訳分かんないのに出くわしたら相手にすんなよ。適当に聞き流してすぐ逃げろ」


「だから、蓮は逃げたんだ?」


蓮がいなくなった一分足らずのことを根に持っていたあたし。


わざとらしくそう言うと蓮は涼しい表情でこう言った。