王子様の甘い誘惑【完】



いつもその不器用な部分ばかり見えてしまうから、嫌な奴のような気がしてしまうけど。


本当の蓮は……やっぱり、すごく優しい人なのかもしれない。



≪ガラガラ……――!!≫


……えっ!?


すると、急に空き教室の扉が勢いよく開いた。


あまりに突然のことに逃げることも隠れることもできず、扉の前で呆然と立ち尽くす。



そして、恐る恐る目の前に立っている人物に視線を向けた。




「立ち聞きとはいい趣味してるんだな?」


そこにいたのは鬼のような形相を浮かべている蓮で。


「ち、違う!!って、違くはないけど……」


「何の用だよ」


「実は、放課後、今週分の食材を買いに行かなきゃいけなくて……それで……」


「放課後、お前の教室に行く」


蓮はあたしの頭をポンッと叩くと、ユキ先輩を残してスタスタと廊下を歩いて旧校舎から出ていった。