王子様の甘い誘惑【完】


その話声は、空き教室の中から聞こえてくる。


あたしはその声に導かれるように数センチ開いている扉から中を覗きこんだ。


「蓮ってホント素直じゃないな」


「何が?」


中には案の定、煙草をふかしている蓮がいた。


隙間から煙草の匂いが漂ってきて、思わず顔をしかめる。


蓮の横にいるのは……ユキ先輩だ。


ソファに座ってふんぞり返っている蓮を見て、ユキ先輩がクスクス笑っている。


「理生ちゃんが作ったお弁当、本当は俺に食べさせたくなかったんだろ?」


「意味わかんねぇよ」


盗み聞きなんてしちゃいけないと分かっているけど、自分を止められない。