王子様の甘い誘惑【完】


「……ここにはいないか」


食堂に引き返してみたけれど、蓮の姿は見当たらない。


……食堂にいないってことは、あの旧校舎で煙草をふかしているのかも。


あたしは旧校舎に向かって走り出した。




「どこだろ……」


旧校舎の中はシーンっと静まり返っている。


物音一つしない古びた廊下を一人で歩くのは少しだけ怖いけど、そうも言っていられない。



蓮にお金を預からなきゃ今日の買い物ができないんだから。



「……ん?」


すると、どこからかボソボソと人の話し声が聞こえてきた。