「本屋?欲しい本でもあんのか?」


「欲しいってわけじゃないけど、本屋さんで節約料理のレシピを調べてたの」


「何のために?」


「な、な、何のためって。そりゃ、蓮に美味しいご飯を作ってあげたいから!」


っていうのは建前で、自分の為ってのが本音。


出来るだけ安くて美味しいご飯をたくさん食べたいから。


だけど、そこは言わないでおこう。


すると、蓮は腕を組んで考え込んだ後、おもむろに財布の中から一万円札を取り出した。


口をへの字にしていた不機嫌そうな蓮の表情が、少しだけ柔らかくなる。


そして、口の端がキュッと上に持ち上がったかと思うと意外なことを言った。



「ほら、これ」


「えっ?なに……?」


一万円札を差し出されて、思わず面食らう。


「明日、その料理本買ってこい」


「……へ?」


「お前が読みたい本もついでに買ってこい。そのかわり、真っ直ぐ家に帰れ」


蓮は無理矢理あたしに一万円札を押しつけた。