「でも……」


さっき知り合ったばかりのユキ先輩にパンをもらうなんて申し訳ない。


やっぱりお金払わなきゃ……――


もう一度ポケットの奥深くまで手を突っ込んだ時、突然お腹がギュルギュルとおかしな音を立てて鳴った。


その音はユキ先輩の耳にもばっちり届いてしまったみたい。


バチッと目が合って、ユキ先輩は堪らず吹き出した。


「……ハハッ!!いい音したね?」


うわぁ……。こんなところでお腹が鳴っちゃうなんて……。


最悪だよぉ……。



「ほら、早く食べな?」


「……ありがとうございます」


恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらパンを取り出す。


「いただきます」


食欲に負けたあたしがチビチビとパンをかじる様子を、ユキ先輩は楽しそうに眺めていた。