久々に声をあげた気がする。

ナキの声がだんだん荒くなっていることも気付かずに。


とっさに否定した「逃げる」という言葉は非常に的を射ていて、確かに僕は、突然告げられた現実にどう対応していいのかわからなかった。



「いいからもう黙れよ!!」



「逃げている」という事実を認めたくなくて、意地になって怒鳴り散らした。




その瞬間、強い風が吹いた。


きっと、気付くのが遅かった。




顔をあげた時には既に遅く、視界一面がすべて白に染まった。


ナキの緑の目だけを残して。




「ナキ…!」




白いハネが、あたり一面を吹き荒ぶ。

緑の目の奥には、底知れぬ悲しみの色が宿っていて背筋が凍った。