「げ。学校遅刻だ!」



飛び起きた俺は着替えだけを済まして走って家を出ることにした。

飯なんて食ってる暇はない。

家から学校までは走って15分。

始業は9時。

時刻は8時47分。

はっきり言って少々遅刻だが、とりあえず急がないわけにはいかない。
一限はデッサンのテストがある。

俺はアトリエ用として着ている所々に絵の具が着いた白いツナギから、黒いジーンズと緑のシャツに姿を変え。
下ろし立てのゴールドの靴を履いて家から飛び出した。
家の前には不気味な位綺麗な毛色の黒猫が、スヤスヤと眠っていた。



学校が見えてきたとき、変な鐘の音がなる。

ゴォン

ゴォン

それは何時もとは違う音色で。

しかしながらあまり気にも止めずに、校門を走り抜けた。


「はっ、はっ」


足を前に出せば出すほど、自然と息も上がる。
全速で走っているのは、とにかくテストには間に合わなければいけないし、遅れればテスト時間のペナルティがあるので、自分の首をしめることになりそうだからだ。


ガラッ


教室の扉を開けると、玉木が此方を向いた。


「おっせぇ!ほら、出席呼ばれてんぞ!」
「あ、はい!」
「…ギリギリだな。セーフだ。」


教師は仕方なしといった様子で、俺の出席簿に○をつけた。


「やっべぇ…セーフセーフ。」


額の汗を拭おうと左手を上げる。
するとソコには見覚えのないアナログ式の腕時計が見えた。


「あ?」


時刻は8時47分をさしたまま、止まっている。