トントンとリズミカルな足音が聞こえて、俺は何となく閉じていた目を開いた。
アイツだ。
ムクッと体を起こせば、死角になった場所にある扉の方に顔を向けた。重い扉の冷たい音が響いて、アイツは屋上に足を踏み入れたのだろう。仕方ない、声をかけてやろうか。


「おい」
「うお!…びっくりした…」



壁から顔を出したアイツはちっとも驚いて無さそうに言えば、こちらに向かってきた。


「サボり?」
「おう」
「長谷川の手伝いしてサボりとか、お前バカか」
「うるせぇよ」


幾分元気がないように見えた。
アイツは俺の隣に腰を下ろせば、一つ重い溜め息を吐いて何か言いたそうに唇を震わせる。
嗚呼、何故かコイツのこの表情は見たことがある。そして今から言う言葉も何となく頭に浮かんだ。
何かを吐き出すようにコイツは声を絞り出した。


「あのさ」
「んー?」
「今から言うこと、変だと思ったらそう言ってくれないか?」
「…なんだよ、改まって…キモいぞ?」
「っ、昨日お前が見た夢って、どんなだった?…俺に、殺される…ってやつ」
「…は?」


俺は思わず聞き返すと同時に顔をのぞき込むようにして体を起こした。
何を言い出すかと思えば。
予想通りではないか。