俺は舞台役者だ。
いや、それは実ではないのだけれど。そのようなものだ。

それに、今回の客は相当鈍いらしい。
俺は幾度目かの今日を始めるために髪を整えていた。
今朝は7時30分、否正確には7時33分に職員会議がはじまり、長ったらしい教頭の渇を26分間聞いて、それから各々の報告を済ませ、8時27分に会議が終わる。
何て事無い。予習は幾度と無く身を持って体験している。

若くて人当たりの良い見た目もまぁまぁな予知の出来る教師、それが俺の設定だ。

この世界はフェイクだ。

この世界の案内人は俺、長谷川。
まぁ、言うならば、長谷川という名前も、設定以外の何者でもないのだけれど。

彼らはこのアトラクションを楽しんで居るだろうか。
否、楽しめる訳がない。
選んだ設定が悪すぎた。
さらには自分達が居るフェイクの世界をも何故か認識していない。

放っておけば、現実世界の彼らが死滅するまで続くやも知れない。

そうなっては困る。業務上死人が出ては業務を差し止められそうだからだ。
今日、今回はこの俺が直々に出向いてヒントをあげようと思う。
このゲームのグッドエンドは一つ。

無くしたものを取り戻す事。

それだけなのだ。

さて、ご覧のお客様。彼らは何を無くしたか、わかりますか?
片方は薄々感じている。
片方はまだ何もわかっていない。

二人が協力すれば、一度で二度おいしく。
二人が協力出来なければ、無限ループ。



今回のヒントはどうしようか。


答えを言うのはルール違反だ。
せっかくの客だし、この世界をそこはかとなくは楽しんでもらいたい。



夢は現実。現実は夢。赤い円、黒い服、黒いモノ、尖った鉄、カメラ、鐘の音。

これだけ言えば数回でクリア出来るだろうか。

あるものは宝箱を指し。
あるものはポイントを指す。

ポイントは分岐点だ。そこの対応で宝箱の場所は変化する。



さぁ、もう答えはわかったね?
彼らはどうだろう。運良く一度で手に入れるか、それともまたループを繰り返すか。




     episode4 end