午後の授業はなんだっただろうか。
もうお腹も一杯で眠くなってきた俺は屋上に足を進めた。
今時らしい高いフェンスで仕切られた屋上には何にもなくて。俺は日陰になっている場所を見つければゴロリと寝転んだ。
キーキー声の女子に呼び止められて猫を見なかったかと言われたが、見たような気もすると返答してすぐここへ来たとすれば、昼休みは直に終わりそうだ。
それから昨日見た夢はとても気分が悪かったことを思い出した。
途切れ途切れにしか思い出せないのだが、腕や足など急所を外した際どい場所に彫刻刀を突き刺すアイツを、俺は下から見上げていた。
初めは痛かったものの、すぐに体が麻痺し始めてどうなったのかわからないのが、実のところだ。
いけ好かない赤色が見えた気がするけどどうだったか。
それに今日は妙な音が聞こえる。
変な鐘の音だ。ゴォンゴォンとうるさい位に鳴っているのに、皆は反応を示さない。

すごく良い音色なのに、だ。

俺はシャツの胸ポケットからタバコを取りだそうとして手を止めた。
東から借りたシャツには胸ポケットがなかったのだ。仕方なく入れたはずのズボンのポケットから、シワシワになったタバコを取り出す。


「だからズボンのポケットは嫌なんだよ。」


ひとつ悪態をつけば、吸い慣れたタバコを口元に運んだ。
電子ライターで火を付ければ、吸い込んで煙を吐き出す。
青い空を紫の煙が遮るように立ち上っていく。


急にふと、死んだ青い空が見えた。
まただ。
東が言っていたとおり、俺は死に取り付かれた男なのかもしれない。