その日の月は妖艶な明るさで街を分け隔てなく照らす。

それはしだいに、街を包みこんでゆく。

しばらくすると、街の至るところから、小さな光が蛍のように舞いだした。

ゆらりゆらりと。

その輝きは、人という『器』の中に存在したモノなのだろうか。
儚く、力強く、そして美しくそれぞれの色を放つ。
そして、数多の光はゆっくりと舞い上がってゆく。

その中に、寄り添いながら舞い上がる二つの小さな光がある。
決して離れることなく、ゆっくり月灯りに溶けてゆく。