「ご飯にするよ。」

まだ、頬を押さえている俺に妻が言った。

「手伝ってくれるんでしょ?」

「…も、もちろん。」

そう言って腕をまくって、一緒にキッチンに並ぶ。

「これテーブルに並べて。」

俺が寝ている間に料理を済ませてあったようで、あとは運ぶだけだった。
ますます、頭が上がらなくなるなと思った。

テーブルの上を鮮やかな料理で飾り、それぞれ席に着いた。

「いただきます。」

いつもと変わらない夕食。
あっという間に食べてしまって、

「ごちそう様でした。」

「ちゃんと、味わいながら食べなよ。最後なのに。」

「いつもと変わらず、美味しかった…です。」

「…美味しかったなんて、初めて聞いた。」

「そうでしたか?」

「なんだか…気を遣ってるの?」

そう言って笑う君に、少しホッとする。

俺は、冷蔵庫からビールを取り出しグラスを二つテーブルに並べた。

「少し、付き合って下さい。」

「仕方ない。少しだけね。」

グラスに少しだけ注いだ。