坂道

あの坂を「せ~の!」で駆け上がったら、大きな青空に届く気がして。慌てて後ろを振り返ると、息を切らした君が笑顔になる。
あの日々がずっと続くと思ってた、あれから月日がたち僕もすっかり大人になり。
ベランダに飾られた、君が買ってきた花。君といつか、組み立てたジグソーパズル。
この小さな部屋の中、あちこちに君の欠片が溢れてて、僕はまた少し歩みを止めてしまいそうです。

君との思い出を詰めた箱を、両手で精一杯押さえていた。それでも時々疲れ果てて、気付けばまた両手で涙を拭う。
箱から溢れた君との思い出は、いくつものシャボン玉に乗って、青空に消えた。
この小さな街に一人いる限り君のこと、何度も思い出し、胸締め付けるでしょう。だけどまたどこかであなたに会える気がして僕はここからずっと動けずにいます。

よく晴れた昼下がり。 大空に触れたくて、僕は一人、あの坂を「せ~の!」で駆け上がる。
登りきる手前で居ないはずの君に振り返る、僕はまだ子供でしょうか…?
ベランダに飾られた真っ赤なあの花は、今年も綺麗に花をつけました。
まだこんなに好きなあなたも僕の知らない街から、僕のこと少しでも思ってくれてたらいいなぁ…!