鮮やかな、黄色のトンネル。
わずかな隙間から、漏れる朝日。
その下で、それを見上げる詩織の小さな後ろ姿。

先週、最も紅葉が進んだ日の朝に撮ったものだろう。
全てが、黄色の光に包まれて、輝いていた。

「いい写真だね。被写体がいいからね?」

おどけた詩織を、兄は鼻で笑って追い越す。
「自分で言うな」

葉っぱを蹴散らしながら歩いていく兄の背中を、詩織は見ている。

小学校のときも、そんな風に二人で葉っぱをまき散らしながら帰ったっけ。
キャッキャッと、ふざけあいながら。

お兄ちゃんも今、同じ事を思い出している。
そんな気がした。

そのときは、ただ楽しくて仕方なかっただけだった。
振り返ってみれば、その瞬間の一つ一つが、輝いている。

ねぇ、お兄ちゃん。
私たちがもっと大きくなって、家を出て、誰かと恋をし、結婚もして。
子どもが生まれて、その子どもも大きくなって、いつか孫ができ、二人がオジーサンオバーサンになっても。
二人で通ったこの道を、絶対に忘れないでおこうね?

詩織は、携帯電話のカメラをそっと兄に向けた。

それが分かっているかのように、兄は足元の落ち葉を足で器用に舞い上げる。

今日最後の太陽の光を受けて、黄色の落ち葉がきらりと輝いた瞬間を、詩織は切り取った。