「・・・コンタクト、落としたのか?」
相変わらず、情緒の分からない兄は色々と質問を変えてくる。

「違いますぅ」

「分かった!銀杏拾ってるんだろ?あれ、茶碗蒸しに入れるとおいしいよな。つぶすと臭いけど」

「・・・違いますぅ」

詩織は、凝視していた葉っぱの海から、ようやく1枚をすくいあげた。
左右の葉が対称に美しく広がった葉だった。黄色の発色も、きれいだ。
これにしよう。

「記念に、とっとこうと思って」
詩織は、その葉を兄に向けてかざしながら、立ち上がる。
ね、お兄ちゃんも一枚、どう?

「ふぅん」
兄は、小首をかしげた。

「・・・落ち葉って、一日経つと結構イカレちゃうぜ。バーサンの肌みたいに干からびてさ」

お兄ちゃん・・・
あんたってば、どんだけ情緒が分からないワケ?

「いいんですぅ!」
詩織は口を尖らせて、先に歩き出した。

バカバカ、お兄ちゃんのバーカ。
一生、彼女なんてできないね、あれじゃ。


そのとき。
制服のポケットに入れていた、詩織の携帯が鳴った。