バケツをかぶり、石ころの目が入れられた、なかなか形の良い雪だるまだ。
両側に木の枝の腕もついている。

雪だるまと目が合った瞬間、雪だるまが何を言いたいのか私には分かった。

-その手袋、ボクが朝まで預かるよ。

私を受け入れるように、こちらに伸びた木の枝の腕。
その先には小さな枯葉がついているだけで、寒々としている。

私は雪だるまに近づいて、手袋をその両腕につけた。

-あぁ、あたたかい。

-とても似合ってますよ。でも、朝まで、だからね?

-分かってるって。ボクに任しとき。


雪だるまは道路に面したところにいるので、この手袋の持ち主が朝ここを通れば、必ず目に留まるだろう。

-あ、手袋の中にうさぎさんだ!

-ふふふ、こんばんは!

-ちょうどよかった、話し相手が欲しかったんだ・・・

雪だるまと手袋の会話を邪魔しないように、私はそっと空き地を後にする。
「よろしくね」と心の中で言いながら。