すっかり冷え切っているのに、温かみのある赤色と、その中でにっこり笑顔のうさぎさん。
手袋が、一生懸命暖かさをアピールしているように思えて、なんだかいじらしく思えた。
赤い糸で結ばれた、一組の手袋。
きっとお母さんが、「なくさないように」とつけてくれたのだろう。
北風の吹きすさぶ中で、右手と左手はその頼りない糸をしっかり握り締め、はぐれないように耐えていたのだろう。
-絶対に、はなしちゃだめだよ。
-ボクたちは、ずっと一緒だよ。
それを、元の冷たい雪の上に戻すのは、忍びなかった。
かといって、持って帰ったところで持ち主を探す術もない。
私は困って、辺りを見回した。
目の前には、雪野原の空き地。
その隅にいた、雪だるまと目が合った。



