短編集*君と紡ぐ、冬


帰路に向け再び歩き出したとき、何かが私の目に留まった。

白一色の雪道の端に、
赤い何か。

半分雪に埋もれていて、『キャラメル』を見るために立ち止まらなければ見過ごしていたかもしれない。

それは、白うさぎの模様が編みこまれた、赤い手袋だった。

私は、思わずその手袋を拾い上げた。
その柄が、昔私が気に入っていた手袋によく似ていたから。

持ち上げた手袋には赤い毛糸がついていて、雪にすっかり埋まっていた片割れが釣れた。

持ち主からはぐれてしまってからどれくらい経ったのだろう。

手袋は、雪の冷気をしっかり吸い取り、本来の手を温めるという機能をすっかり失ってしまっている。
むしろ、冷たさが重さに変わって私の手に伝わってきた。

手を冷やす手袋。
それは傍目から見れば、持つに値しない手袋だ。

それなのに、なぜか私はその手袋を放り出すことができないでいた。

昔の学校帰りと同じように雪道をポテポテ歩いているうちに、いつの間にか子どもに戻っていたのかもしれない。

-本当は、とってもあたたかい手袋だよ。
-ゴミじゃない、ただはぐれちゃっただけなの。

手袋が、そんな風に言ってるような気になって。