夜の雪道はいつもよりほんのり明るくて、一人歩きも怖くはない。
今夜は月も出ているから、なおさらだ。

月の光、それに頼りなさげな街灯と、家々から漏れてくるわずかな灯りが乱反射して、薄い藍色をした雪の上に幾層にも重なる私の影を映し出している。

自宅へと続く、細い路地。
皆が寝静まるにはまだ早い時間だけど、とても静かだ。
雪が街の喧騒を、全て吸収してしまうのだ。

聞こえるのは、雪を踏みしめる私の足音だけ。
気温が低すぎて、足跡はできる端から、サラサラと音もなく消えていく。

こんなにサラサラでは、『キャラメル』はできないだろうな。

試しに吹き溜まりに足を突っ込み、できたてホヤホヤの自分の足跡をのぞいてみたが、やはりキャラメルはできていなかった。