気づかないうちに、辺りが薄暗くなっていました。
家々の明かりが、灯り始めています。
地面から冷たい空気が背中を上ってきて、健二くんがブルッと身震いしました。

「さぁ、風邪ひくからもう帰らないと」

雷さんの言葉に促されて、健二くんはランドセルを背負いました。

「ねぇ、うさぎってどうやって作るの?」

「そうか、うさぎは作ったことないのか。じゃあ、明日またおいで」

「うん、また明日ね」

歩き出した健二くんの背中に、雷さんの声が届きました。
いつもとは比べ物にならないくらい小さくて、聞き取れません。

「え?」

振り向いた健二くんに、雷さんが少し照れながら、言いました。

「雪だるま、作ってくれて・・・ありがとう」

「お母さん、早く元気になるといいね!」

健二くんが返した言葉に、雷さんは笑顔でうなずきました。

街灯に照らされて見えたその顔は、お母さんが大好きな子どもの顔になっていました。




(ゆきんこ・おわり)