彼の死は兄からの電話で

翌日母の知るところとなった



彼には姉が一人いて

彼の遺書を預かっていた

彼の死の際には病院から

その人に連絡が行くように

手配されていた

葬式もせず彼の姉と彼の息子の

二人きりで密葬してくれと



僕はその日

いつもより静かな母の側で

一日彼女を見守るように過ごした

どんな思いが母を駆け巡っていたか

僕にははっきりとはわからなかった

だが母の複雑な悲しみが

沈黙の中から伝わってくるような

そんな気がした



兄は二日間葬儀で帰らなかった

家はその間いつもよりしんとして

まるで喪に服しているような

そんな時間を僕たちは過ごしていた