シド・ヴィシャスのマイ・ウェイは

最低だった



と僕は冬休み明けの部活で

僕にセックス・ピストルズを

教えてくれたヤツに感想を述べた

ヤツは大笑いして言った

だろ?

最低かつ最悪…

人に聞かせるような代物じゃねぇ

それがパンクだっ!

偉そうに片手を腰にあて

(牛乳を飲む時のあの仕様)

片手は高々と中指を立てて

僕にどや顔をして見せた

観衆の期待に応えるという

アーティストとしての既成概念を

シドはラリラリながら打破したのだ

これぞパンクスの鏡…最低だぜ!

…おまえ…なにもんだ

僕は前回に引き続きヤツをほめた

俺か?俺はな…

何者でもない

一瞬ヤツの目がマジになった

俺の名前を呼ぶなよ

俺には名前などなかったはずだ

僕は期せずして鳥肌が立った

ヤツはもう普通の顔に戻り

僕にニッと笑って去って行った



聴衆の期待に一切応えない

それで"マイ・ウェイ"なんだ

僕の脳裏には一瞬かいまみた

ヤツのマジな目が焼きついていた

ヤツも…追い詰められてる

きっとなにかあるんだろう

僕はヤツに少し親近感を覚えた



マイ・ウェイ

明日僕はあの部屋に行く

最低の人生…人はそう言うだろう

だけど僕は信じている

僕の大事なものは

僕にしかわからない

どんな価値があるか

どんな重さがあるか

だから僕は明日あの部屋で

兄に壊されに行く

そして兄も僕も知るだろう

壊しても壊れないものが何か?

ということを




その夜も僕は兄にいだかれた

手足にアザが着くほどの激しさ

兄を受けとめきれない自分の身体が

悔しい