夜僕たちは早々とベッドに入った

風呂上がりにもう

二人とも待ちきれなくて

互いに目で合図を送った

本当にダメになってしまうかも

僕は僕の中の悪魔に心の中で囁いた

悪魔が笑いながら腰を抱く

理性の蕩ける音が聞こえる

電気を消す

兄が僕のベッドに潜りこむ

「我慢出来ない…ごめん」

兄はいつも謝る

「ごめんはいらないから」

僕は兄の耳に舌を入れながら言う

「僕の中の悪魔が許さない」

「お前は天使だ…いつだって」

兄は僕にくちづける

「日常がなくなっちゃった…僕」

「ああ…俺も生まれてから一度も」

「それでも兄貴は大学で研究まで

してる…社会の中にいるよ」

「違うよ…俺にとって物理学は

日常のない場所だ…俺はそこにしか

居れない」

兄は今日も初めて聞く話を語った

「無口も変人でカタがつく」

兄はクスッと笑った

「俺にはあれがあるから正気の振り

をしていられる…まるでこの世で

生きているみたいに見えるだろ」

僕を弄びながら兄は続けた

「物理をやってると…突然わかる」

「な…にを?」

「宇宙は完璧で…美しい」

その通りだ…すぐ忘れるけど

「僕もそれを見たこと…ある」

兄は黙って僕にキスした

「自分もその完璧さに含まれている

と思いたい…すると俺は悪魔さえも

完璧な宇宙の美において」

兄の愛撫が激しくなる

また今日も兄は狂っている

「許さねばならない」

「ああっ…」

「しっ…声…出しちゃだめだ」

無理だ…こんな

「あ…にき…も…無理」

「苦しいな…いつも」

「うん…」

もっと声を出して喘ぎたい

イクときに兄のこと呼びたい



朝から抱えこんでいた熾火が燃える

それが今は叶う切なさに

互いに狂う

秘密という扉で抑えつけられた狂気

だけどもう漏れ出している