「大丈夫ですか!」

彼の顔がみるみる土気色に

なっていくのが僕にもわかった

「出血…したかも」

彼は苦しい息の中で僕に言った

「ナ…ナースコール押しますか?」

「ああ…よろしく」

僕はあわてて枕元のボタンを

押そうとした

「待てよ」

彼は急に僕の手を掴んで

ボタンを押すのを止めさせた

「え…どうして?」

「ひとつだけ…教えてくれ」

彼は苦しそうに息をつきながら

僕に尋ねた

「どんな…やつだった?」

「誰が?」

「だまして…やりやがったやつ」

「早く呼ばなきゃ!」

僕は焦って言った

「いいから!…教えろ」

彼の鬼のような目が

僕に有無を言わせなかった

「ふ…二人組の…やくざっぽい奴ら

だって…兄貴言ってた…そいつらに

薬で身体の自由を奪われてやられて

…写真とビデオ撮られて脅されて…

兄貴言いなりになるしか…なくて」

彼は僕の手を離した

僕はすぐさまナースコールを押した

「知ってるんですか?」

彼は力なく答えた

「心当たりが…ある」

彼は苦しそうに枕に顔を埋め

目を閉じた

「俺のせいだ…」

僕は兄を呼びにロビーに

飛び出していた