「こんなこと考えたくもないが…

あいつはその…借金とかいう嘘に

ケリ着けるために…もしかして

身体で償わされたんじゃ…」



残念ながら彼の想像は的中していた

僕は彼の目を見れずに横を向き

膝の上で拳を握りしめて

うなずいた

「俺の部屋でか」

彼は畳み掛けるように聞いた

僕は再びうなづいた

「…あなたは…いなかったって」

僕は絞り出すように言った

「いつだ?」

彼の声は震えていた

いつだった?

あれは…

僕はあの日来た

兄のメールを思い出した

急いで携帯を開き履歴を見た

9月の半ばだった

僕はそれを彼に見せた

「倒れたすぐあとか…」

彼は過去を記憶から引き出そうと

呼吸も忘れて考えているようだった

「あいつは来た時に次に来る日を俺

に言ってからいつも帰った…だから

俺は倒れて運ばれたときあいつが来

たとき俺が居なくて驚かないように

介抱してくれた知り合いに玄関に

メモを残してもらうように頼んだん

だ…」

彼はそこまで言うと

不意に黙りこんだ

僕は次の彼の言葉を待っていた

しかし彼は黙ったままだった



「そんな…」



彼の次の言葉は

僕に向けた言葉ではなかった

「どう…して」

その声に僕は目を上げ彼を見た

彼はいきなりベッドから

身体を起こして呆然と僕を見つめた

「あり得ない…なぜ…」

彼はひきつった顔で呟くと

そのまま後ろに倒れた