「…話して…お前…見たんだろ?」

「…見…た」

「何をした?…俺なにした?!」

僕は枕に顔を埋めシーツをつかんで

泣きそうになるのを耐えて言った

「PTSDだよ…多分…痙攣してたし

…酷いパニック発作だったし…僕が

止めても止まらないんだ…普通じゃ

ない声で喘いで…のたうち回って…

髪を自分で掴んで頭をベッドに打ち

つけて…」

「おれ…が?」

「震えが止まらないから僕兄貴抱き

締めてた…でも…胸を掻きむしって

手を押さえたら…自分の腕を何度も

…何度も噛んで…」

「ずっとか…夜中じゅうずっと」

僕は無言でうなずいた

兄は膝を抱えて布団の中に座り

膝に自分の顔を埋めた

「…だめだ…思い出せない…!」

典型的な

フラッシュバックの逃避

「おれ…壊れてるのか」

兄はうなだれたまま

顔を上げる気力もなく

布団の中で呆然と膝を抱えたまま

動かなくなった

僕はのろのろと起き上がり

兄に「下にいるよ」と告げて

兄をそっと一人にするために

一階に降りていった