顧問のあわてて急かす声で

僕はハッと我に帰った

「ほら!舞台!舞台行け!」

「え…ああ…はいっ」

僕はつまづきそうな勢いで

客席の狭い通路をみんなと

パタパタ走った

特別審査員のロンブーオヤジが

僕たちの到着を待っていた






2位と3位のとなりに司会が

僕たち4人を誘導する

頭が真っ白でどうして良いのか

よくわからないぞ

それは他の3人も同じだったけど





しどろもどろで受賞インタビューに

ヤツが答えてる

「ええ…はい…ええ…まあ…」

ほとんど上の空じゃないのか?

「…あれ?すんません…オレなんて

言いました?」




特別審査員が最後にこんなことを

言った

「未完成だけどね…将来性を買った

俺の独断と偏見だけどな…出来過ぎ

は伸び悩む…だからみんな音楽やめ

るなよ…これからのバンドだから」





「それではとうとうグランプリの

発表です…」



僕は1位のバンドを朦朧と見ていた

もうグランプリどころじゃない

いまここに僕たちがなぜいるのか

まるで夢物語みたいで

少し怖いくらいで

つまり本当に醒めてしまいそうで




あのロンブーオヤジは

僕たちの魂と言った




タマシイ




それがもし

僕たちの中の神のカケラなら

僕たちはこの世界を

愛で満たすことは出来るのだろうか




この音楽で…




ふと横を見ると

普段ニコニコしてるはずの後輩が

目を真っ赤にして泣いていた



最後まで言わなかった彼女の決意を

聞かなければ…と僕は思った