失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】






シャワーを全開にして

僕は泣いた

頭から人工の雨に打たれて

僕は泣き続けた

人間が

他人を蹴落としてでも

地位や評価を受けたいことを

僕は此処でわかった




居場所がないんだ

みんな居場所が欲しいだけだ

自分をどうやったら許せるか

知らなくて

形…それしか

他人に見せられるものが

無くて



人類の悲劇の累積にすら見えた

何かに勝つことで居場所を得て

刹那の安堵にまどろむ僕たち

だからその闘いが終わることは

無い…無いんだ

虚無はそんな生易しいものじゃない






…もしかして

誰にも居場所なんかない

のかな…?

世界は

そんな場所…?

もしかして

もしかして




人間が悲しい

僕だけの悲しみじゃない

人類が

悲し…い…

涙が

止まらないほど