失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】





…なんて欲のない僕たち!

そして

なんて無駄のない叶え方

確かにそうだ

今までもそうだった

願ったことに正確無比な…しかも

ピンポイントで撃ち抜いてくる

まさか自分が願ったことが

こんなことだったのかと

あとから思い知らされるほどに






「な…もう一度考えよう…オレ達が

何を望んでいるかをさ」

ヤツはメンバーに向かって

そう提案した

「オレはこの気持ちのままじゃ

次のステージで歌えない…でもさ

どうしたいか…はっきりわかってた

とは自分自身思えない…この部分が

コケただけでこんな気持ちになるな

んて…ちょっと…自分を見損なう」

「そんなこと…ナイデス」

「じゃあナヲさん今日と同じような

テンション…このままで出るか?」

「それは…今ムリカモ」

ヤツは顧問に向き直った

「いい試練っす…受けて立ちます」

「おまえっ…なんて良いリーダー

なんだ」

顧問は感動していた

僕も驚いた

いや…実際ここでこんな提案

なかなかできないよな…

コイツ腹が据わってる

いや…正直なんだ

自分自身に


「わかった…お前が言うんだから

向き合うよ…自分と…音楽と」

僕が言いたいことを先輩が先に言う

「お前達…」

顧問はうなずく

「でかい目標持つと…自分の一番

弱い部分と向き合わなきゃならない

ことが来る…引き金引いた俺が言う

ことじゃないけどな…」

「いや…別に先生悪くないし」

せめて僕もフォローする

「ここまで付き合ってくれるのが

不思議なくらいですよ…先生」

「…ありがとうな」






さて

僕たちの試練は

深いかも知れない

天使なんて

自分たちを呼んだからかもね