「来ちゃダメだ…俺に触るな!」

兄は怯えた声で叫んだ

僕は兄がなぜ叫ぶのか

全く理解できずに兄を追った

僕の行動も異常に見えたに違いない

一言も言わずに向かってくる僕を

兄は両手で押さえていた

「だめだ…許して…頼むから」

兄は必死で僕を押し戻そうと

僕の両肩を掴み抵抗した

でも僕は止まることはなかった

兄の手を振りほどき

僕は兄の身体に馬乗りになった

「だめだよ!どうしたんだ!」

兄の叫ぶ言葉はやはり

なにも僕に届かなかった

僕は兄の上半身を押し倒していた



兄は必死に抵抗したけど

僕の力は有無を言わせなかった

僕はそのまま兄を貪った

まるで飢えた肉食獣が

生肉を喰らうような激しさで

兄の悲痛な懇願はすべて

僕には一切理解不能だった

ただ暴力性だけが僕を支配していて

自分が何をしているのかすら

僕自身わけがわからなかった

兄が抵抗すればするほど

僕は激しく兄を貪った

腕力はいつもと違い異常に強く

兄は易々と羽交い締めになっていた

兄のボロボロの身体を

僕は喰らい尽くした

気が狂ったような制御不能な時間

どれくらいの時間かすらわからない

兄が涙を流し嗚咽する

僕になにが起きているか

兄はすぐにわかったに違いない

僕が正気を失い逃げ道もないことを

兄の抵抗は途中から止んだ

あとは止まらない兄の嗚咽と

僕の終わらない行為だけが続いた



どれくらいの時間が過ぎたのか

窓の外がうっすら白みかけていた

不意に僕は

意識が遠のいていくのを感じた

まるでスイッチがオフになるように

僕は兄の身体の上で気を失った

兄の腕が僕を抱き止めるのを

遠くで感じたのも

束の間の出来事だった